すみだトリフォニーホール
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《ロシア・ピアニズムの継承者たち》第6回:リリヤ・ジルベルシュタイン[ピアノ]
チラシPDFダウンロード(2.9MB)

≪ロシア・ピアニズムの継承者たち≫

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現代の継承者たちの新たなる響きに
ロシア・ピアニズムの血脈
その偉大な精神の系譜を聴く

第6回 リリヤ・ジルベルシュタイン[ピアノ]
Lilya ZILBERSTEIN, piano

強靭な技巧と完全無欠の構築美を兼ね備えたロシア・ピアニズムの代表的女流ピアニスト。
グネーシン音楽アカデミーで受け継いだロシア・ピアニズムの核心。

日 付
2012年4月30日(月・祝)
時 間
15:00開演(14:30開場)
出 演
リリヤ・ジルベルシュタイン[ピアノ]
ヴァシリス・クリストプロス[指揮]
新日本フィルハーモニー交響楽団[管弦楽]
曲 目
[ソロ] ムソルグスキー/組曲《展覧会の絵》
[管弦楽] ストラヴィンスキー/組曲《火の鳥》(1919年版)
[協奏曲] チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 特別招待:12/6 2012/2/7
更新情報:メッセージ、解説 2012.04.20

チケット情報

料 金
●第4〜6回 (全4公演)セット券  S ¥18,400 A ¥15,200
●各1回券 S ¥6,000 A ¥5,000
割 引
トリフォニークラブ会員は、
全4公演セット券はS ¥16,100 A ¥13,300、
各1回券は各10%引き、同時入会申込可
発売日
トリフォニークラブ会員先行発売:2011/9/25(日)
一般発売:2011/10/23(日)
料 金
お問合せ トリフォニーホールチケットセンター
03-5608-1212

オンラインチケットのお申込

ご利用には、一般オンライン会員あるいはトリフォニークラブ会員への登録が必要となります。
※一部公演・券種のみの取扱いとなります。
※一般オンライン会員では、トリフォニークラブ会員特典は受けられません。

託児サービス

◆お預かり時間:開場時間から終演10分後まで
◆お預かり場所:すみだトリフォニーホール内 託児室(大ホール 2階ロビー)
◆利用料金(1名につき):生後満6ヶ月から1歳児¥3,000、2歳児以上¥2,000
◆予約方法:公演日の1週間前までに、下記番号あてに電話予約

●申し込み・お問い合わせ:

株式会社小学館集英社プロダクション 総合保育サービスのHAS(ハズ)

0120-500-315 [平日10:00-17:00]

広大無辺で深遠なるロシア・ピアニズムを聴く愉しみ

真嶋雄大

世界のピアニズムを国別に俯瞰するとき、もっとも広汎にして膨大な系譜を構築しているのが、ロシアである。そのロシア・ピアニズムの本質に迫るこのシリーズは、ピアニストの個性とその根幹となるロシアの系譜を改めて呈示して著しく興味深い。
 
第1回は2010年12月、ヴィヴィアナ・ソフロニツキーのフォルテ・ピアノによるショパン・リサイタルだった。プレイエル復刻モデルなどを用いての貴重な演奏会でもあったが、第2回は2011年6月のニコライ・デミジェンコ。バシュキーロフからゴリデンヴェイゼル、パブストへと繋がる系譜のひとりで、リサイタルと協奏曲に、いずれもロシアの大地に根差した濃密な情感と馥郁たる香りを表出して聴くものの心を捉えた。また12月には震災の影響で延期されたアレクセイ・リュビモフのシューベルト・リサイタルも予定されている。
そもそもロシア・ピアニズムの特質とは何か。それはまず美しい音である。美しい音とは即ち倍音を数多く含んだ音である。ピアニストを志す子どもたちは、幼少からそういう美音を徹底的に聴かされて身体に叩き込まれ、その音を出すべく切磋琢磨するのである。さらにリストが伝えた重量奏法による格調高いダイナミズムと瑞々しい叙情性、そしてスラヴ特有の情熱を表出して初めて、正当的なロシアの系譜に身を置くことになる。
すみだトリフォニーが開館15周年を迎える2012年、このシリーズに登場するラリッサ・デードワ、セルゲイ・エデルマン、リリヤ・ジルベルシュタインは、まさにそのロシア・ピアニズムを標榜するピアニストたちなのだ。
 
日本ではあまり知られていないが、デードワはモスクワ音楽院でレフ・オボーリンに、大学院でエフゲニ・マリーニンに学んだ。そのマリーニンに「豊潤な色彩感と振幅の巧みさは卓抜」と絶賛されたデードワは、1976年のバッハ国際コンクールに第2位入賞、そのキャリアをスタートさせた。ソリストとしてセンター(Centaur)にドビュッシーピアノ作品全集を録音して高く評価されたり、同コンクールで第1位だったミハイル・ヴォルチョクと結婚してピアノ・デュオとしても活躍、現在ではメリーランド大学教授として後進の指導にもあたる。今回は2012年が生誕150年となる得意のドビュッシー・プログラムだけに、彼女の全貌が明らかになるだろう。
続くエデルマンは、しばらく武蔵野音大で教鞭を執っていたように、日本ではお馴染みの存在だ。ブルーメンフェルトとゲンリヒ・ネイガウスという2人の巨人に薫陶を得た父親に指導を受け、後にジュリアード音楽院でも学んでジーナ・バッカウァー・コンクールなどに優勝、世界的に注目された。また近年トリトンから立て続けにリリースされたCDはどれも水準が高く、比類ない資質を如実に示しているだけに、ベートーヴェン協奏曲全曲演奏では繊細ながらドラマティックな造形を築き上げるだろう。
 
そしてモスクワに生まれたジルベルシュタインは、グネーシン音楽アカデミーでアレクサンドル・サッツに師事した。サッツはボリス・ベレゾフスキーの師としても知られているが、ネイガウスの弟子のレオニード・ブリュンベルクに学んでいる。つまりリリヤも巨大なネイガウス派の潮流に育っている。その後リリヤはブゾーニ国際コンクールに優勝してデビュー、ソリストとしてアバドなどとも共演、またアルゲリッチとのデュオ・ピアノも各地で熱狂的に支持されている。常に作品の核心に一途に迫っていくリリヤであるから、今度のムソルグスキーとチャイコフスキーにおいても、生命力溢れる躍動感を携え、豊かな色彩を纏いながら深々としたとした情景が移ろう絶妙な音楽を聴かせてくれるに違いない。
 
この3人を聴かずして、ロシア・ピアニズムは語れない。

(まじまゆうだい/音楽評論家)

リリヤ・ジルベルシュタインより公演に寄せて

 日本で演奏できることをとても嬉しく思います。日本には友人もたくさんおり、私はいつも彼らのことを、そして福島をはじめとするあの痛ましい震災にあわれた方々のことを思っています。

 日本という国にはいつも魅了されます。1989年に初めて来日して以来大好きになりました。

 日本に来るのはいつでも楽しみです。というのは、日本にはクラシック音楽への情熱がいつもあり、人々が音楽を心から感じていて、アーティストの側は、その思いを共有することも提供することもできるからです。

 今回、ロシアン・プログラムを演奏することも楽しみです。私は日本の皆さんがロシア音楽に大きな価値を見出していることを存じていますし、その中でも特に、クラシック音楽の伝統の中においても主要な作品である、チャイコフスキーとムソルグスキーの作品を演奏できることは、私にとって喜びです。

リリヤ・ジルベルシュタイン

ヴァシリス・クリストプロスより公演に寄せて

 約1年ぶりにまた日本に来て、音響のすばらしいすみだトリフォニーホールで指揮をすることになり、大変嬉しく思います。

 新日本フィルと初めて出会ったときのことは、私のとても懐かしい思い出であり、今回再び新日本フィルの団員の方々と一緒に演奏するのが楽しみです。ストラヴィンスキーの大作《火の鳥》とチャイコフスキーの壮大なピアノ協奏曲第1番を含むプログラムにもわくわくしています。

 私はこれまでにも、素晴らしいピアニストであり音楽家であるリリヤ・ジルベルシュタインさんと、音楽の喜びを分かち合ってきました。実は、私たちは、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番をヨーロッパで何度か共演しているのです。去年の春にもチューリッヒのトーンハレで素敵な演奏会をしました。ジルベルシュタインさんと私はこの作品の解釈についてかなり似通った意見を持っていますし、私は彼女の表現の仕方と美しい音が大好きです。ですから、観客の皆様にはきっとたっぷり楽しんでいただけることと思います。

ヴァシリス・クリストプロス

マルタ・アルゲリッチより公演に寄せて

 リリヤにとって特別なチャイコフスキー、ムソルグスキーを、私の大好きなトリフォニーホールで演奏すると訊き、日本のみなさまにとりまして、きっと素晴らしい時間になるでしょう。

 私とリリヤは何度も共演をし、毎回彼女の素晴らしい音楽性とピアニズムに魅せられています。

 私にとりまして、とても大切な同僚ピアニストのひとりであることは間違いありません。

マルタ・アルゲリッチ
2012年4月、ジュネーブにて

解説

真嶋雄大

 ロシア・ピアニズム最大の特徴は、幼少の頃から徹頭徹尾耳を鍛え上げることである。音は倍音を多く含むほど美しく響く。その理想の音を聴かせ、体に記憶させ、如何にその音を再現できるか鍛錬を続けていくのである。その過程で達成できないものは容赦なく切り捨てられる。この徹底したシステムがロシア・ピアニズムを現在の興隆に導いた。またその方向性のひとつとして、限りなくロマンティックかつ抒情的表現を求められる。さらに音楽に関わる精神性を裏付けるために、音楽史や作品の誕生した背景、文学、美術、そして哲学などを十二分に俯瞰した上での表現が重要とされるのである。
 こうした根幹があってこそ、膨大な潮流を持つロシア・ピアニズムの系譜が構築されてきたのである。
 もちろん、リリヤ・ジルベルシュタインもそれを標榜するピアニストだ。1965年モスクワに生まれたジルベルシュタインは、グネーシン特別中等音楽学校でアダ・トラウブに学び、1983年からグネーシン音楽アカデミーに入学してアレクサンドル・サッツ教授に薫陶を得た。ボリス・ベレゾフスキーも教えたサッツは、フリードリヒ・グルダの長男パウルを教えたレオニード・ブリュンベルクに学んでおり、そしてブリュンベルクの師こそ、かの巨人ゲンリヒ・ネイガウスなのである。
 その後ジルベルシュタインはブゾーニ国際コンクールで優勝、世界的なキャリアを築いていくのであるが、今回はおよそ4年ぶりの来日となる。これまでもソロ、室内楽、協奏曲にいずれも真摯なアプローチと深い精神性を携えた重厚な演奏を示してきた彼女であるが、取り分けその音色の多彩さや情景の移ろい、馥郁たる芳香は独創的で、あくまで気品を失うことなく、躍動感溢れるパッションを漲らせながらクライマックスへと突き進む鮮烈なドラマはジルベルシュタインの独壇場だ。
 今日、彼女は19世紀後半のロシアを代表する2作品を弾く。しかもそれはロシアの民族性を重視した「五人組」のムソルグスキーと、西欧的方向性を目指したチャイコフスキーという、いわば対立構図上にある。しかしジルベルシュタインは、その対照的な両者を演奏することで、より鮮明にロシアの濃厚な抒情や大地の薫りを立ち昇らせ、スケールの大きな音楽的感興を湧き上がらせるに違いない。

■モデスト・ムソルグスキー(1839-1881) 組曲《展覧会の絵》 

 ムソルグスキーは、バラキレフ、キュイ、ボロディン、リムスキー=コルサコフとともにロシア国民楽派《五人組》のひとりである。生涯官吏として生活する一方で、大胆な個性を放ち、民族的色合いの濃い新鮮な作品を次々に発表してフランス印象派に大きな影響を与えるなど、精力的に作曲活動を展開した。この作品は、1873年に夭逝した急進的建築家ヴィクトル・ハルトマンの遺作展の印象を綴ったものと伝えられている。
 冒頭の雄渾なテーマ「プロムナード」が会場を歩く様子を表し、いずれもが個性的な絵画をモチーフとした10曲を間奏として繋ぎながら、圧倒的なフィナーレへと収斂する。重量感のあるスラヴの民族的哀愁が濃密に湛えられたロシアを代表するピアノ作品であり、原色的な色彩感も大きな魅力となっているが、出版されたのはムソルグスキーが没して5年後であった。後年ラヴェルにとってオーケストレーションが施され、こちらも広く親しまれている。

■イゴール・ストラヴィンスキー(1882-1971) バレエ音楽《火の鳥》1919年版

 「春の祭典」、「ペトルーシュカ」と並ぶストラヴィンスキーの三大バレエのひとつ。20世紀に入ってすぐ、ロシアの芸術プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフはバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)を立ち上げ、パリを舞台に新作バレエやオペラなどを中心に、華々しい文化活動を展開した。
 当初ディアギレフは、この題材の作曲をリャードフに依頼していたが、なかなか完成しないのに痺れを切らし、まだ新人の域を出ない、けれども輝かしい才能を秘めたストラヴィンスキーを抜擢したのであった。そして1910年、パリオペラ座での初演は大成功、無名の作曲家は一躍世界の注目を浴びたのである。
 翌年ストラヴィンスキーはこの4管編成のバレエ曲を組曲に編纂(1911年版)、その後2管編成にした版(1919年版)を発表、さらに1945年にも改訂を加えている。
 作曲の師であるリムスキー=コルサコフに献呈された。

■ピョートル・チャイコフスキー(1840-1893) ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 

 チャイコフスキーは生涯にピアノ協奏曲を3曲残した。けれどもこの「第1番」以外、演奏される機会はそう多くない。
 ロシア・ピアニズムの源流のひとり、アントン・ルビンシテインによって創設されたのがモスクワ音楽院であるが、初代校長は弟でありチャイコフスキーの師でもあるニコライであった。青年作曲家として数多くの作品を発表し、また若きモスクワ音楽院教授でもあったチャイコフスキーはそのニコライに献呈すべく、この協奏曲を1874年秋に書き上げた。
 けれどもニコライはそれを拒否、書き直しを命じる。チャイコフスキーが制作過程で助言を求めなかったというのが理由であるが、作曲家はそれに屈することなくオーケストレーションを施し、一音足りとも変更せず初演に漕ぎ着けたのである。初演は大成功、後にニコライも和解して好んで演奏したという。

(まじまゆうだい/音楽評論家)

リリヤ・ジルベルシュタイン / ムソルグスキー:展覧会の絵
"Lilya Zilberstein / Mussorgsky : Pictures at an Exhibition"

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